── 感情ではなく根拠で選ぶ、納得の判断軸を持とう
🧩 本記事は、シリーズ「数字で語れる力」第3回です。
第2回は「課題を見える化する力」をテーマに、感覚的な問題を数字で捉える方法を紹介しました。
今回はその“見える化した数字”をどう使うか──
つまり、数字をもとに「正しく決める」力について掘り下げていきます。
感情で決めて後悔したことはない?
仕事でも投資でも、副業でも、「なんとなく」で決めた選択が後から裏目に出た経験は誰にでもあると思います。
その多くの原因は、「比較基準がなかったこと」。
感覚に頼ると、“今の気分”や“周囲の空気”に流されてしまい、判断がぶれやすくなります。
数字を使えば、感情を整理し、判断を構造化できる。
つまり、「数字思考」とは、迷いを減らし、自分で納得できる選択をするためのツールなんです。
「数字で決める」とは、“冷たい選択”ではなく、“納得できる選択”。
数字で意思決定するとはどういうことか
数字を「判断の物差し」に変える
感覚だけで決めると、後から“本当に正しかったのか?”と迷いが残ります。
数字を使えば、選択の根拠を「比較」できます。
- 新プロジェクトA vs B → 作業工数に対する期待収益で比較
- 休日の時間配分 → 成果/満足度の比率で比較
数字という物差しを持つことで、判断がぶれにくくなり、再現性が生まれます。
感情と数字のバランスを取る
“数字だけ”でも、“感情だけ”でも不十分。
感情は方向を示し、数字はその道を測るメジャー。
「やりたい」と「やるべき」を両立させるための補助線として、数字はとても有効です。
本業での意思決定(定量比較の視点)
研究開発の現場では、限られたリソースをどのテーマに割くか、常に判断を迫られます。
私は、プロジェクトを選定する際に、
作業工数に対する期待収益(=ROI的な指標)・開発リードタイム・リスク係数
をスコア化して並べるようにしています。
たとえば、
- 工数は多いが成果の波及効果が大きいテーマ
- 収益性は低いが、既存技術の延長で確実に進められるテーマ
──こうした比較を行うことで、“やるべき順番”が明確になります。
数字化してみると、「上司の好み」や「雰囲気」で選ばれがちな案件も、
根拠をもって議論できる土台が生まれる。
「数字で語る」とは、“納得してもらうための準備”でもある。
副業での意思決定(期待値思考の応用)
副業を始めると、「次に何に時間を投資すべきか」を選ぶ局面が多くなります。
私は、新しい試みを始める前に、必ず**期待値(E=成果×確率)**でざっくり見積もるようにしています。
たとえば:
- 収益記事を書く → PV×クリック率×報酬単価
- テンプレ販売 → ダウンロード率×販売価格×想定顧客数
「時間1時間あたりの見込みリターン」を出すと、
感覚的に「これやりたい!」だけで動くよりも、冷静に優先順位がつけられます。
数字で見れば、
“情熱で突っ走るか”“積み上げを優先するか”の判断も、客観的に整理できるようになります。
意思決定に使える3つの数字フレーム
1️⃣ インパクト × 実行容易性マトリクス
→ 「重要だけど難しいこと」は後回しにして、
“すぐできて効果が大きいこと”から着手する。
2️⃣ 期待値(E=成果×確率)思考
→ 完璧な精度はいらない。
大まかでも、「どちらの見込みが高いか」を判断する基準を持つ。
3️⃣ リスク・リターン比
→ リターンに対してリスクが大きすぎないかを確認。
→ 定性的な“怖さ”を、定量的にバランス判断する。
“数字の完璧さ”より、“数字を使う習慣”のほうが価値がある。
数字で選ぶからこそ、後悔が減る
感情で決めたことは、後で他人のせいにしやすい。
数字で決めたことは、自分で納得できる。
判断のプロセスを数字で残しておけば、失敗しても学びになります。
数字で語る意思決定は、**「迷わない仕組み」**をつくることでもあります。
今日からできる「数字で決める」練習法
1️⃣ 選択肢を3つに絞り、1分で数字をつける
→ 完璧じゃなくていい。「直感的スコア」をつけてみよう。
2️⃣ 決めた後に“根拠メモ”を残す
→ 「Aを選んだ理由:見込みリターン1.5倍」など、
後で見返せるように記録しておく。
3️⃣ 振り返りを数字で行う
→ 「この判断で成果は○%、満足度は△点」
→ 感情を“数字の裏づけ”で整理する習慣を持つ。
まとめ:数字で決める人は、自分を信じられる人
数字は“正解を教えてくれるもの”ではなく、
“自分で納得できる選択”をするための支え。
感情を押し殺すのではなく、
数字を通じて感情を整理し、未来をデザインする。
「数字で決める」とは、迷わない自分を育てるプロセスなのだ。
💡 次回予告
次回は「数字で伝える力」。
伝え方ひとつで、同じ数字が“刺さる言葉”にも、“無関心な数字”にも変わる。
数字を“伝わる形”に変える技術を紹介します。
📘 「数字で語れる力」シリーズ一覧
1️⃣ 第1回:なぜ「数字で語れる力」が必要なのか
2️⃣ 第2回:数字で課題を見える化する力
3️⃣ 第3回:数字で意思決定する力(本記事)
4️⃣ 第4回:数字で伝える力
5️⃣ 第5回:数字で成果につなげる力(準備中)
